過去の上演作品[2006-2010]
過去の上演作品[2006-2010]
Stuff happens
スタッフ・ハプンズ
作=デイヴィッド・ヘアー
訳=常田景子
演出=坂手洋二
<東京>2006年1月14日(土)〜1月25日(水) 下北沢ザ・スズナリ
<名古屋>1月27日(金)〜 30(月)七ツ寺共同スタジオ
<大阪>2月2日(木)〜 6日(月)ウイングフィールド
06/01/14
ブッシュ、ブレア、パウエル、ラムズフェルド…………、
実在する政治家たちを登場人物に描く「ハイパー演劇」。
世界に衝撃を与えた、ドキュメンタリードラマ最新作!
イラク戦争は、なぜ起きたか。
2003年夏、大量破壊兵器は見つからなかった。
ワシントン、ヨーロッパ、国連で、
各国首脳の思惑が交錯する。
真実は、誰の手にあるのか。
「大義なき開戦」の裏面を明らかにする、鮮烈のポリティカル・フィクション。
『パーマネント・ウェイ』に続いておおくりする、待望の第二弾。
“STUFF HAPPENS”
「ろくでもないことは、おきるものだ」
───ラムズフェルド・米国防長官のイラク戦争に対するコメント。
吉村直(青年劇場) ……… コリン・パウエル(米国国務長官)
江口恵美(桃園会) ……… 俳優B/ポール・オニール(米国財務長官)
インタビュアー/ニュー労働党の政治家
デイヴィッド・マニング(英国外交アドバイザー)
フィリップ・バセット(英国特別顧問)
リチャード・ディアラヴ(英国諜報部の長)
パレスチナの学者
ジェレミー・グリーンストック(英国国連大使)
ジェシカ・スターンB(テロ対策専門家)
デイヴィッド・ケイ(イラク調査団長)/記者/編集者
インタビュアー
中山マリ ……… 俳優C/ラムズフェルドの友人2/ウォルフォウィッツの同僚
インタビュアー/ニューヨークのイギリス人
イゴール・イヴァノフ/遺族の母
鴨川てんし ……… ディック・チェイニー(米国副大統領)
川中健次郎 ……… ドナルド・ラムズフェルド(米国国防長官)
猪熊恒和 ……… ジョージ・W・ブッシュ(米国大統領)
大西孝洋 ……… 俳優A/ラムズフェルドの友人1/中将(国防次官補)
ジョージ・テネット(CIA長官)
サダム・フセインのスポークスマン
マイケル・ガーソン(主席スピーチライター)
ジャック・ストロー(英国外務大臣)
マーク・デイトン(上院議員)
アラン・シンプソン(労働党議員)
ハッサン・ムハマッド・アミン将軍/サダム・フセイン
古参の英国政府関係者/ジャック・シラク(フランス大統領)
ジェラール・エレッラ(英国駐在のフランス大使)
ロビン・クック(英国下院総務)/イラク難民
江口敦子 ……… コンドリーザ・ライス(大統領補佐官)
内海常葉 ……… ハンス・ブリクス(国連大使)
裴優宇 ……… 俳優D/ヨーヨー・マ/コフィ・アナン(国連事務総長)
ジャン=ダヴィッド・ルヴィット(仏国連大使)
ジョン・ネグロポンテ(米国国連大使)
モハメッド・エルバラダイ(IAEA事務局長)
リカルド・ラゴス(チリ大統領)/アフリカの役人
アラステア・キャンベル/ジョフ・フーン
トレヴァー・マクドナルド(ニュースキャスター)
ジェシカ・スターンA(テロ対策専門家)
アリ・フライシャー(米国大統領のスポークスマン)
久保島隆 ……… ポール・ウォルフォウィッツ(米国国防副長官)
怒れるジャーナリスト/ジョン・マッケイン(米国上院議員)
モーリス・グルドー=モンターニュ(仏大統領の個人外交使節)
杉山英之 ……… トニー・ブレア(英国首相)
工藤清美 ……… ローラ・ブッシュ(米国大統領夫人)
阿諏訪麻子 ……… ブリクス夫人/チェイニーの娘
安仁屋美峰 ……… ラムズフェルド夫人
樋口史 ……… ウォルフォウィッツ夫人/ブレア夫人
STAFF
美術=二村周作
照明=竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響=島猛・鈴木三枝子(ステージオフィス)
衣裳=大野典子
舞台監督=森下紀彦
演出補=吉田智久
演出助手=坂田恵
美術助手=齊藤亮太
文芸助手=久保志乃ぶ・清水弥生
宣伝意匠=高崎勝也
衣裳助手=桐畑理佳
協力=桃園会 青年劇場 C−COM オサフネ製作所 高津映画装飾株式会社 東京衣裳
高橋淳一 久寿田義晴 橋本加奈子 藤島麻希 香取智子
中川稔朗 藤木亜耶 園田佳奈 河本三咲 田中星乃 増永紋美 加藤真砂美
Company Staff=小金井篤 樋尾麻衣子 向井孝成 宮島千栄
制作=古元道広・近藤順子
制作助手=小池陽子
コーディネーター=マーティン・ネイラー
イラスト=石坂啓
平成17年度文化庁芸術創造活動重点支援事業
坂手洋二とゲストによるアフタートークを実施しました
16(月):西堂行人(演劇評論家・近畿大学教員)
17(火):松岡和子(翻訳家・演劇評論家)
18(水):常田景子(翻訳家)
19(木):谷岡健彦(東京工業大学助教授)
20(金):高辻ひろみ(世田谷区文化生活情報センター館長)
22(日):保坂展人(衆議院議員)
■当日配布パンフレットより■
作者ノート
『スタッフ・ハプンズ』は、ごく最近の歴史を中心に据えた歴史劇である。この戯曲の中の出来事は、公的、私的、双方のさまざまな情報源から出ているものだ。起きたことは起きたことだ。故意に事実でないことを語っている部分はない。演説のシーンは、一字一句引用してある。世界の指導者たちとその側近たちの閉じられたドアの中でのシーンに関しては、想像力を働かせた。これは確かに戯曲であり、ドキュメンタリーではない。そして、登場人物やストーリーだけでなく、テーマによって支えられている、と私は思っている。
私の理解を助けるために、寛大に時間を割き、知識を分けてくれたすべての人々——事件の渦中にいた人々や、傍らにいた人々——に感謝しなければならない。コロンビア大学の客員研究者、クリストファー・ターナー博士には多くを負っている。博士は、最初から最後まで私を助けてくれた。決まりきった感謝の言葉などでは、博士の研究の深さと詳細さに対し、公正を欠くことになるだろう。
DH
デイヴィッド・ヘアー
今もっとも多く世界で作品が上演されているイギリスの劇作家。
日本でも「スカイライト」「ブルールーム」「エイミィズ・ビュー」といった代表作が上演されている。「スタッフ・ハプンズ」「パーマネント・ウェイ」はいずれもロンドンのナショナルシアターで上演され、大きな反響を巻き起こしている最新作。
***
上演にあたって
『スタッフ・ハプンズ』は手強い戯曲だ。なにしろ基本的には、こみいった事実関係を再構築することだけで成立している劇だ。同じようにドキュメンタリー要素の強い『パーマネント・ウェイ』と比べても、市民の生活感情に訴える部分は乏しい。私たちは、世界の命運を握る人たちのせめぎ合いそのものに、どっぷりと浸からなければならない。
日本ではなじみの少ない人たちも含めて、各国の政治家・著名人・個人がぞろぞろ出てくる。だが、そうした実在の人たちを「登場人物」にしてしまうところがデイヴィッド・ヘアーの卓越した手腕であり、イギリス演劇のバックボーンの強靭さであろう。そうだ。シェイクスピアたちの劇世界だって、王侯貴族閣僚など、国や軍隊を動かす者たちどうしの駆け引きに満ち満ちていたではないか。ただ、それがすべて進行形の「現実」であり、ここに描かれる紛争と対立は未だに解決していないということが、大きな違いである。
この作品のミソは、「イギリスの視点」で見た、ブッシュ政権のアメリカ、「9.11」以降の世界であるということだ。私たちはそれをまた他者の視点から探索することになるが、このややこしい構図に積極的に取り組むことで見えてくるものは大きい。
消去法で「現実」を理解することもできる。米英の指導者・黒幕たちが蠢く中東の戦争と混乱についての劇だから当然と思われるかもしれないが、この戯曲では、アジアについてまったく言及されていない。日本に関係した部分はたんに事実関係として「京都議定書」への言及がある程度だ。日本国内での報道ではブッシュ米大統領の「良き友」「仲間」であるかのように扱われているはずの総理大臣に至っては、名前さえ出てこない。つまり、米英にとっては、イラク戦争そのものに日本は「関係なかった」。ただ日本側が勝手に金と自衛隊を出した、そして、頼まれもしないのに「戦犯」の仲間入りをした、というだけなのである。
どうぞ最後までごゆっくりおつきあいください。
坂手洋二