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海の向こうには、もうひとりの自分がいる。


彼方に戦場を臨む海。

国境を越え、時代を越え、鯨捕りたちの新たな旅が始まる!

CAST>

トニー・ブルール Tony Broer…………トマス Thomas

ジョコ・ビビット・サントソ Joko Bibit Santoso…………ミカエル Mikhael

ヘルミ・プラスティヨ Helmi Prasetyo…………ガブリエル Gabriel

ユディ・アクマッド・タジュディン Yudi Achmad Tajudin…………ピリポ Pilipus

ヤルディム・アダ Yardim Ada…………ペテルス Petrus

大西孝洋Takahiro Onishi…………館石Tateishi

下総源太朗Gentaro Shimofusa…………安座間 Azama

川中健次郎 Kenjiro Kawanaka…………神林 Kanbayashi

猪熊恒和 Tsunekazu Inokuma…………山野 Yamano

千田ひろし Hiroshi Chida…………宮本 Miyamoto

中山マリ Mari Nakayama…………アンナ Anna

マルゲスティ Margesti…………マリア Maria

インヌ・フェブリヤンティ Ine Febriyanti…………アグネス/モニカ Agnes/Monica

向井孝成 Takashige Mukai…………新(日本兵)Atarashi

丸岡祥宏 Yoshihiro Maruoka…………芳賀(日本兵)Haga

ノル・ドミンゴ Nor Domingo…………ゴリン(ハナソカイ・ゴロウ)Gorin (Goro Hanasokai)

吉田智久 Toshihisa Yoshida…………昆(日本兵)Kon

瀧口修央 Shuou Takiguchi…………鹿毛(日本兵)Shikake

内海常葉 Tokoha Utsumi…………田中(日本兵)Tanaka

キャメロン・スティール Kameron Steele…………チャーリー・ライアン Charlie Ryan

宇賀神範子 Noriko Ugajin…………女1/孫1 Woman1/Grandchild1

樋尾麻衣子 Maiko Hio…………女2/孫2 Woman2/Grandchild2

宮島千栄 Chie Miyajima…………女3/女性記者 Woman3/reporter

江口敦子 Atsuko Eguchi…………女4 Woman4

大山頼子 Yoriko Oyama…………女5 Woman5



STAFF>

翻訳/野村羊子 ユディ・アクマッド・タジュディン

通訳/野村羊子 油井理恵子

英語翻訳・通訳協力/川端亮子 キャメロン・スティール

美術/加藤ちか

照明/竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)

音響/島猛(ステージオフィス)

舞台監督/吉木均

演出助手/川畑秀樹 加藤一浩

文芸助手/久保志乃ぶ 永田恵子 小室紀子

進行助手/工藤清美 中島忠昭 吉村崇

衣裳進行/木下祐子

小道具管理/柿澤宏子

翻訳協力/常田景子

宣伝意匠/高崎勝也

宣伝協力/上田郁子

宣伝写真/安藤毅

舞台写真/大原拓 西岡真一

協力/小島曠太郎 江上幹幸 幸喜良秀 宮城康博 今郁義 照屋京子 佐藤尚子 

山本邦彦  下島三恵子 上田真弓 岡松美枝 崎浜秀彌 瀬長和夫 田原雅之 知花昌一

寺田柾 中村一枝 長田直美 難波田到吾 藤木勇人 前田昭夫 宮城奈々 宮平剛仁 

銘苅靖 見澤孝一 ジャドゥック・フェリアント ジェフリ・アンディ アイス 

高津映画装飾株式会社 東宝コスチューム 神田屋靴店 C-COM 劇団ダミアン

制作/古元道広 山下陽子(国際交流基金)

制作助手/楠原礼美子 高野旺子 桐畑りか 尾形可耶子 国光千世 古賀淑実

主催/燐光群+国際交流基金


『東京国際舞台芸術フェスティバル2000』参加公演
共催:財団法人セゾン文化財団
助成:文化庁アーツプラン21 芸術創造特別支援事業





◎当日配布パンフレットより


坂手洋二


本日はご来場いただきまして誠にありがとうございます。

 劇中の台詞は、日本語・インドネシア語・英語、それに僅かなタガログ語ですが、字幕・イヤホンガイドなど、観劇用の通訳は用意されていません。
 基本的に、日本語・インドネシア語のいずれかが理解できれば内容は推定できるようになっています。いわば日本語・インドネシア語の「リバーシブル演劇」です。それぞれの言語に、聞かせたい台詞がいっぱいあるので、両方を全て知っていただけないのは少し残念な気もしますが、登場人物たちが異言語に戸惑う状況を、そのまま味わっていただけることも、この公演の趣旨に合っているはずです。
 どうしても全言語の内容を日本語で知りたいという向きは、2001年1月発売予定の『せりふの時代』(小学館)を御覧下さい。日本語原版と各国語に訳された台詞が掲載される予定です。

 この劇のキャッチコピーは「海の向こうには、もうひとりの自分がいる」です。
 「もう一人の私」を見るというドッペルゲンガー現象は、世阿弥いうところの「離見の見」と合い通ずるものがあり、演劇的な発想の一つの典型でありましょう。異なる国・社会、異なる言語・文化の俳優どうしが相互に相手を「未知の自己」に見立てることで、両者の「ズレ」「理解の難しさ」を乗り越えた出会いを探索する。これはある意味で「人間は自己そのものからも疎外されているかもしれない」という疑惑を乗り越える方策であり、舞台上の俳優間交流についての試行であり、同時に「異言語・異文化交流」の新機軸を期する、本作の仕掛けの中心であります。

 この公演は、当初予定の上演台本先行の形でなく、海外俳優の参加による来日後の稽古・ワークショップを経て、戯曲を書き進めていきました。出演者・スタッフの皆さんには、ハードスケジュールの進行でたいへんな苦労を掛けましたが、出演者の魅力溢れる個性を、劇世界の核心の場所に於いて引き出すには、正しい選択であったと思います。皆様の寛容と情熱に支えられて初日を迎えられることに感謝しております。ほんとうに大勢の方々に支えられて、成り立っている公演なのです。
 また、国際交流基金の皆様をはじめ、日本・インドネシア両国を跨いで活躍されている方々にも、多方面に渡り、お世話になりました。この二年間の様々な出会いは、じつに豊かで、刺激的でした。とくに、小島曠太郎・江上幹幸両氏に導かれたラマレラ村との出会いは、私の人生のだいじな宝物です。
 皆様、ほんとうにありがとうございました。


***


捕鯨の村ラマレラ  小島曠太郎


 熟帯の国インドネシア、レンバタ島ラマレラ村。そこには400年もの昔から今に至るまで、クジラを獲ることに命を懸けている海の男たちがいる。近代的装備はいっさい用いず、手漕ぎの船と手投げのモリという肉体の力だけでクジラに挑んでいく。漁船は「プレダン」と呼ばれる長さ10メートル、幅2メートルの本造帆船。ヤシの葉で編んだ帆を張り、10名ほどが乗りこむ。男たちがねらう獲物はマッコウクジラ。体長10メートルをこす、歯クジラ類最大の種である。
 今年5月8日、クジラが獲れた。本年の初クジラ、それも一日に3頭という幸運な漁のスタートに、浜は歓声で沸きかえった。前の夜、初出漁を前に行う恒例の儀式をした。L家の一室に船のメンバーが集い、神聖なモリ綱を祀り、ロウソクを立て、祈りを捧げた。次の朝、船は祀られたモリ綱と希望を載せ、新しい海に出た。そしてクジラを曳いてきた。
 みんなと一緒に歌いながら櫂を漕ぎ、クジラを曳いた。男たちが満ち足りた顔で歌っているのを見たとき、ふいに、早くこのクジラを村の女たちに届けたいという想いが、強く胸に迫ってきた。前年は6頭という大不漁であり、8月以来クジラの姿を見ていない村には、鯨油ランプの炎も灯っていなかったのである。
 村に喜びの余韻が残る3日後、坂手洋二氏と同じ船に乗りクジラを獲った。一番モリを打った船はクジラに引き摺られ転覆し、同乗していた劇団メンバーたちはクジラの海で泳いだ。それぞれが強い運を持っていた。初乗船でクジラを仕留めるという奇跡に近い「燐光群・南洋くじら部隊」たちは、村でかなり話題になった。
 月曜日から始まった幸福な日々は、土曜日の定期市で弾けた。山の民は溢れんばかりの農作物を持ちより、新鮮なクジラ肉を手に微笑み、ラマレラ女性の笑顔と嬌声は市場を満たし、いつまでも絶えることがなかった。
 ラマレラに魅せられて7年、クジラをめぐるいくつもの物語を村の人たちと共有してきた。そして間違いなく、2000年の5月のことはいつまでも村の記憶に残り、語り継がれるだろう。