過去の上演作品[2006-2010]
過去の上演作品[2006-2010]
The Power of Yes
ザ・パワー・オブ・イエス
作○デイヴィッド・ヘアー 演出○坂手洋二 訳○常田景子
<東京>2010年5月10日(月)~23日(日)下北沢ザ・スズナリ
<大阪>2010年5月28日(金)〜30日(日)精華小劇場 [精華演劇祭2010 SPRING/SUMMER 参加]
<名古屋>2010年6月1日(火)〜2日(水)愛知県芸術劇場 小ホール
10/05/10
<CAST>
John Oglevee・・・・作者(デイヴィッド・ヘアー 劇作家)
安仁屋美峰・・・マーシャ・セルダレヴィク(作者に金融について説明するためナショナルシア
ターに雇われた助手 フィナンシャル・タイムズ社に採用予定
南谷朝子・・・デヴィッド・マーシュ(銀行家 ロンドン・アンド・ オックスフォード・キャピ
タル・マーケット社会長)、トム・ヒューイシュ(市民相談窓口アドバイザー)
藤井びん・・・ジョージ・ソロス(投資家 慈善事業家) 、ノーザン・エコー紙記者
田中茂弘・・・住宅ローン会社会長、大企業経営者(英国有名企業をいくつか統率)
川中健次郎・・・ジョン・モールトン(未公開株投資家、金融サービスと買い手待ち債権のエキス
パート アルケミー社設立者)、デヴィッド・ フロイド(政府顧問、銀行家
民営化の専門家)
猪熊恒和・・・ハリー・ラブロック(企業顧問弁護士 シティの企業合併に際し英国最大手企業
数社を担 当)、ヘッジファンド・マネージャー(ウォール・スト リートのインサ
イダー)
中山マリ・・・ロナルド・コーエン(未公開株投資家 ベンチャー・ ビジネス投資の第一人者)
大西孝洋・・・ハワード・デイヴィス(金融サービス機構[FSA]初代会長、イングランド銀行
元総裁、現ロンドン大学経済学部長)
杉山英之・・・スコット・ラドマン(未公開株投資家 ネクター・キャピタル社設立者 アメリ
カ出身)
西川大輔・・・ポール・ハモンド(金融ヘッドハンター 国際規模の金融人事を専門とするハモ
ンド・パートナーズ代表)
鴨川てんし ・・・マイロン・ショールズ(経済学者 ブラック=ショールズ公式を完成させノーベ
ル経済学賞受賞) 、アラン・グリーンスパン(元アメリカ連邦準備制度理事
会会長) 、アデアー・ターナー(金融サービス機構[FSA]現会長)
横山展子・・・デボラ・ソロモン(ジャーナリスト ニュー ヨーク・タイムズ)、 ソロスの秘書
伊勢谷能宣・・・銀行の若い男(イングランド銀行)
橋本浩明・・・ジョン・クラダス(国会議員 2007年に 労働党副党首に立候補)
矢部久美子・・・ ジョン・クラダスの秘書B
根兵さやか・・・ハワードの助手
桐畑理佳・・・パーティーの人、行列の人
樋尾麻衣子・・・ポール・メイソン(テレビ・ジャーナリス ト 「ニュースナイト」経済担当
エディター)、ジョン・クラダスの秘書C
松岡洋子・・・ファイナンシャル・タイムズ記者(金融ジャーナリスト)
鈴木陽介 ・・・サイモン・ロフタス(証券トレーダー) 、ジョン・クラダスの秘書A
<STAFF>
美術○島次郎
照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
音響操作○齋藤貴博(ステージオフィス)
衣裳○宮本宣子
舞台監督○高橋淳一
演出助手○武山尚史
文芸助手○清水弥生・久保志乃ぶ・村松みさき
美術助手○松村あや
衣裳助手○石橋育恵
イラスト○沢野ひとし
宣伝意匠○高橋勝也
Company Staff○向井孝成 宮島千栄 秋葉ヨリエ 内海常葉
協力○ネイラー, ハラ インターナショナル ワンダー・プロダクション
青年座映画放送株式会社 劇団俳優座 手塚宏二(こりっち(株)) 神尾直人 森下紀彦
高津映画装飾株式会社 C-COM マイド 吉本知世 安西奈緒美 米澤望 鈴木由里
制作○古元道広 近藤順子
文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業)
「振り返ってみると、銀行がリスクを管理できるという考え方は、 まったくの幻想だったと言えるでしょう」
「これは芝居じゃありません。ただの話。いかにして資本主義が、ギシギシと停止したかという話です」
2009 年春、イギリスのナショナル・シ アターは劇作家デイヴィッド・ヘアーに、新作を依頼しました。
「世界金融危機はなぜ起こったか、いま何が起きているの か。」
ヘアーは、多くの関係者へインタビューを重ね、その証言をまとめてドラマを書き上げました。オリジナル版は9月、ロンドンで公演が始まると同時に大きな反響を呼び、好評により期間が延長、同年4月まで上演が続きました。
ポンド危機により「ヘッジファンドの帝王」と呼ばれるジョージ・ソロス、現代金融工学の先駆けと言われるブラック-ショールズ方程式を完成させたノーベル賞経済学者マイロン・ショールズを始め、銀行家、投資家、ジャーナリスト等、金融界の大物たちが続々登場。「世界金融危機で何が起こったか」を語ります。
「世界経済危機」の深層に迫る、ドキュメンタリー・ドラマです。
■当日配布パンフレットより
ご来場ありがとうございます
坂手洋二
イギリスのナショナルシアターで発表された、デヴィッ ド・ヘアーのドキュメ ンタリー戯曲を上演するのは、これで3度目である。同シリーズの『パーマネント・ ウェイ』『スタッフ・ハプンズ』を上演してきた実績を買われてか、昨秋に新作『ザ・ パワー・オブ・イエス』が発表されるや否や、日本での上演を持ちかけられた。
私はこれまで、このシリーズのイギリスでの上演を観て いなかった。ロンドン じたい12年行っていない。本家ナショナルシアター版は、基本的に暗い素舞台で語る俳優各々に照明が当たるというシンプルな形式で、その背景に、内容に関わる映像や字幕が映写されたと聞いた。イギリスでは知られている有名人たちが登場人物のモデルになっていることもあって、「そっくりさん大会」的な楽しみ方も されているという情報もあった。
これまでの日本版上演では、『パーマネント・ウェイ』 は、かつての事故現場を想起させる場所で鉄道の線路上をさまよう乗客たち、『スタッフ・ハプンズ』は、倉庫に籠もって悪だくみをする怪しい奴らというように、オリジナル版にはない構造を作りだし、場面・背景を具体的に作ることができたが、この『ザ・パワー・オブ・イ エス』も、特定の場所が舞台として設定されているわけではない。前二作を踏襲し て、日本版ならではのオリジナルの設定を考えても、どこかしっくりこない。
ちょうどこの3月、私は『屋根裏』のフランス版上演に まつわるイベントのため パリに招かれたついでに、ユーロスター経由でロンドンへ行った。そしてデヴィッド・ ヘアーのドキュメンタリー戯曲のイギリス版上演を、この『ザ・パワー・オブ・イエス』で、初めて体験したのである。確かに、暗い素舞台で語る俳優各々に照明が当たる というシンプルな形式で、映像や字幕が多用されていた。劇中イギリスではよく 知られているか、それなりに名前を聞く人物が多々登場するので、「そっくりさん」 ではないにしても、「みんなが知っている」ことを利用した「くすぐり」が多用され ていた。
結論は明解である。とにかく、今までのようにはゆかないということだ。ストラ イクゾーンは前二作よりも狭くなっている。ゆえに、日本版についても、独自のや り方を発見しなくてはならない。
考えてみれば、ナショナルシアターが劇作家に「世界金融危機はなぜ起こったか、 現在何が起きているのか」を舞台化するよう依頼したという、そもそもの成りた ちじたいが、この劇の根幹である。ヘアーは、銀行家、投資家、経済学者、国会議員、 新聞記者といった金融関係のキー・パーソンたちへの取材を重ねた。私たちも、作者が「現実」に出会ってゆく過程、この劇の「構造」を通して、 「なんでもかんでも『はい』と言わせてしまう力(The Power of Yes)」の正体に迫りたいと思う。