過去の上演作品[2006-2010]
過去の上演作品[2006-2010]
Hashimura Togo
ハシムラ東郷
作・演出○坂手洋二
<東京>2009年11月20日(金)〜30日(月)座・高円寺1[座・高円寺 秋の劇場11 日本劇作家協会プログラム]
<仙台>2009年12月8日(火)〜9日(水)エル・パーク仙台ギャラリーホール
<盛岡>2009年12月12日(水)盛岡劇場メインホール
<名古屋>2009年12月15日(火)〜16日(水)愛知県芸術劇場小ホール
<福岡>2009年12月19日(土)〜20日(日)イムズホール[イムズパフォーミングアーツシリーズ09 vol.10]
<伊丹>2009年12月22日(火)〜24日(木)AI・HALL [共催公演]
09/11/20
<CAST>
田岡美也子 …… 奥様 母(ケイト) マリー・ジェニー・ハウ レイノルズ夫人
平栗あつみ …… 美子
植野葉子 …… シャーロット スタッフ グラッツ
中山マリ …… 声 チーフ ギルマン
鴨川てんし …… 編集長 グランパ フーヴァー フジ大尉
大西孝洋 …… ハシムラ東郷1 ウォラス・アーウィン Mc東郷
猪熊恒和 …… ハシムラ東郷2 乃木 現代の投稿者1 学僕 ハシムラ東郷
杉山英之 …… ハシムラ東郷3 ウィル・アーウィン ジョン 博士
川中健次郎 …… ハシムラ東郷4 マーク・トウェイン 日本人紳士 牧師 ヒトラー
樋尾麻衣子 …… 女 アイネス・ヘインズ・ギルモア テッシー・マツキ
安仁屋美峰 …… 女 キャサリン オノト・サン つなぎの女3
伊勢谷能宣 …… トミー 現代の投稿者2 青年
西川大輔 …… ストランスキー 投稿者1 父(ディック) 旦那様 ガーランド
武山尚史 …… ボーイフレンド 乃木 俳優 地区検事
鈴木陽介 …… 友人 投稿者2 俳優 アンソニー
矢部久美子 …… 女 書生 ヘンリー・クレイ・ソーダ つなぎの女4
渡辺文香 …… 女 娘(ルーシー) つなぎの女4
横山展子 …… 女 ネリー・ボク メイド つなぎの女2
根兵さやか …… 現代の投稿者3 女 女の子
橋本浩明 …… 投稿者3 俳優 アヲコ サム・ボク
<STAFF>
美術○島次郎
照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
音響操作○山下菜美子(ミントアベニュー)
衣裳○宮本宣子
舞台監督○高橋淳一
演出助手○城田美樹
振付○矢内原美邦
宣伝意匠○高崎勝也
美術助手○片平圭衣子
衣裳助手○山下和美
文芸助手○久保志乃ぶ・清水弥生
翻訳協力○須藤鈴・圓岡めぐみ・伊勢谷能宣
協力○グループ る・ばる エム・カンパニー 円企画 TPT 高津映画装飾株式会社
オサフネ製作所 マイド 吉本知世 小池陽子
Company Staff○桐畑理佳 向井孝成 宮島千栄 村松みさき 秋葉ヨリエ 内海常葉
制作○古元道広・近藤順子
[ 東京公演 ]
提携○座・高円寺/NPO法人劇場創造ネットワーク
後援○杉並区 杉並区文化協会
託児協力○特定非営利活動法人 子ども文化NPO M・A・T
[ 仙台公演 ]
協力○SENDAI座☆プロジェクト 後援○仙台市 制作協力○柴田環(TIME Create)
[ 盛岡公演 ]
協力○岩手県演劇協会 盛岡演劇協会
後援○盛岡市教育委員会 財団法人盛岡市文化振興事業団
制作協力○稲邊弘康(劇団コトナコナタ)・柏木史江・河村睦(劇団ゼミナール)
澤田綾香(香港活劇姉妹)・沢野いずみ
[ 名古屋公演 ]
制作協力○加藤智宏(office Perky pat) 西杢比野茉実(少年王者舘)
七ツ寺共同スタジオ
あいち燐光群を観る会
後援○名古屋市教育委員会
[ 福岡公演 ]
主催○燐光群/(有)グッドフェローズ ピクニック
特別協力○イムズ
[ 伊丹公演 ]
共催○AI・HALL
平成21年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業)
■当日配布パンフレットより■
ご来場ありがとうございます。
坂手洋二
百年前、アメリカでもっとも有名だった「日本人」。それがコラムニスト「ハシムラ東郷」である。永遠に35歳の日本人学僕(苦学生兼家内使用人)ながら、アメリカの新聞・雑誌に辛口のアメリカ批評を書いた。本国では上流階級の出身だったとしても、アメリカでは「メード」として苦労する日本人留学生。わざと誤字、誤読を織り交ぜ、とんちんかんな「ハシムラ東郷」の言動を笑うアメリカの一般家庭や社会そのものが逆にからかいの対象になるという仕組みが評価され、作家マーク・トウェインにも激賞された。早川雪洲主演でハリウッド映画の二枚目の主人公にもなった。30年余りにわたって多くのアメリカ人に愛されたが、日本との開戦後は憎まれ、戦後は忘れられていった。
そういう人物が主人公の劇を、これから皆さんにご覧いただくわけである。
……という辺りで、賢明な観客の皆さまはもうお気づきであろう。
そんなに有名な「日本人コラムニスト」が実在したならば、その存在を日本のマスコミ文化教育社会歴史国際等々の関係者諸氏が今まで放っていたはずはない。
ということは、どうやらこの話は眉唾である。
『ハシムラ東郷 イエロー・フェイスの異人伝』なる本が昨年上梓されたというのは本当か? 慶応大学教授「宇沢美子」なる著者が、実在しているとは限らない。ロビーで売っている、チラシにあるのと同じ絵が表紙の『ハシムラ東郷』本も、フェイクに違いない。
はい。そうです。今回の芝居は全部ウソです。作り話です。さすがにそれを明かさぬまま皆さまに見ていただくのも気が引けましたので、あらかじめここでお知らせしておこうと思いました。
ご容赦のほどを!
……と記しても、聡明なる観客の皆さまは見抜かれているであろう。
やはり「ハシムラ東郷」は歴史上、登場した。宇沢美子教授は実在するし、著書『ハシムラ東郷』は先月ヨゼフ・ロゲンドルフ賞を受賞、高い評価を受けている研究である。
「ハシムラ東郷」は、これまでその存在があまりにも知られていないという事実じたいが作り手の関心を惹き、その存在の数奇な運命を辿りたいという衝動を呼び起こしたのであろうと。「ハシムラ東郷」は、日米関係史、日本そのもの、アメリカそのものの歪んだ現実を逆照射する。
そして、こんな「ごあいさつ」が書かれているのも、作り手が、「ハシムラ東郷」登場と再発見に至る経緯の不可思議さ、そして「ハシムラ東郷」現象に於ける「フィクション」と「現実」の対立・融解・再構築の構造に、演劇性を見出しているからである。
そちらが真実です。
ほとんど「原作」といっていい、『ハシムラ東郷 イエロー・フェイスの異人伝』の著者・宇沢美子さんに、心より感謝いたします。宇沢さんの『女がうつる ヒステリー仕掛けの文学論』(勁草書房)を中心とする過去の研究も、「原作」といえるでしょう。ハシムラ東郷とウォラス・アーウィン、シャーロット・ギルマン周辺に関するありとあらゆる資料を提供していただき、未訳の「ハシムラ東郷」関連書も翻訳していただきました。翻訳に協力して下さった須藤鈴さん、圓岡めぐみさん、伊勢谷能宣さん、ありがとうございました。
シャーロット・ギルマン『黄色い壁紙』『フェミニジア(三輪妙子訳 現代書館)』、山内恵さんの『不自然な母親と呼ばれたフェミニスト シャーロット・パーキンズ・ギルマンと新しい母性』(東進堂)、村上由見子さんの『イエロー・フェイス ハリウッド映画にみるアジア人の肖像』(朝日選書)などにも多くの示唆を受け、引用、参照させていただきました。
心より感謝いたします。
百年前、アメリカでもっとも人気の あった日本人を、知っていますか。
「歴史」と「現在」を 結ぶ冒険がはじまる!
ハシムラ東郷 1907年、デビュー。日本人学僕(Japanese schoolboy)にして、人気コラムニスト。
マーク・トウェインにも絶賛された。その姿は数々の挿絵に描かれ、幾つもの亜流を生んだ。
「出っ歯に吊り目に丸眼鏡」という日本人像の原型となったとされている。
終戦直後のGHQの検閲と日本の映画人群像を描いた『天皇と接吻』から、十年。
日米関係史の深層を新たな視点から描く、待望の新作。
この作品は宇沢美子著「ハシムラ東郷 イエローフェイスのアメリカ異人伝」(東京大学出版会)に着想を得ました。