過去の上演作品[2006-2010]

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Broken landscape[Suite,Solitude of the 20th century]

 

組曲二十世紀の孤独 第三楽章

壊れた風景

別役実 演出川畑秀樹


<東京>2006年9月3日(日)〜10日(日) SPACE雑遊 

 

06/09/03

CAST>

女1…………………… 坂井香奈美
その母………………… 中山マリ
男1…………………… 川中健次郎
男2…………………… 裴優宇
男3…………………… 内海常葉
女2(男3の妻)…… 樋尾麻衣子
男4…………………… 小金井篤


STAFF>

美術池田ともゆき

照明竹林功(龍前舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
舞台監督○高橋淳一 

衣裳鈴木真紀子 

演出助手・音響操作坂田恵 

進行助手楠原礼美子 

照明操作伊勢谷能宣
設営協力○鈴木等(スペースライン) 

宣伝意匠高崎勝也
制作○古元道広・近藤順子・小池陽子

協力太田篤哉(SPACE 雑遊 オーナー) 龍前舞台照明研究所 ステージオフィス 

高津映画装飾株式会社 C-COM 岡野彰子 川端恵美子 小林優 園田佳奈 増永紋美

八代名菜子 矢野志保


平成18年度文化庁芸術創造活動重点支援事業

俗にいう「バブル期」と「高度経済成長期」の狭間。

1970年代後半から1980年代前半にかけて。

どこか平穏で、しかし次の時代が見えない頼りなさを感じながら、人々が過ごした時代……。

それは今まで見過ごされていた「20世紀日本の曲がり角」だったのかもしれない。


『にしむくさむらい』以降、小市民の内省を描いた別役実 の作品群は、みごとにそれを予見している。

さまよう人間たちの姿を、ある場所の、限られた時刻の出来事に凝縮した『壊れた風景』は、

その空間性と厳しさに於いて際だっている。

当日配布パンフレットより


5月の連休明け、坂手氏から、『組曲 二十世紀の孤独』という三つの楽章から成る芝居のうち一つの楽章を別役実さんの戯曲で構成してみたいのだが、やってみませんかというお誘いを頂いた。4年前、燐光群のアトリエ公演として上演した『壊れた風景』初演を評価して頂いた上でのお話である。
快諾してうちに帰り、当時のパンフレットをひっぱり出して自分が何を記したのかを検証してみた。
その中には2001/9.11のことが鮮明に書かれていた。
あの日、芝居の可能性を探してNYCにいた自分が、人の心を癒す音楽の速効性と何もできない芝居の無力感に打ちのめされていたことが書き残されている。
あれから五年、今でも時々目にする飛行機がビルに突っ込むあの映像。
しかしあの瞬間に確実に何百という命が失われた・・・・。アフガニスタン、イラクと続き、停戦が成立したとはいえ、今でもレバノンでは一触即発の緊張感が 続いている。
暑い夏、蝉が力一杯鳴く中で、戦時ではいつも弱い立場の母子の泣き声がダブって聞こえそうである。
二十世紀を経て新たな時代に突入した今、我々は正しき道を歩いているのだろうか。

前述した芝居の無力感には後日談がある。
あるプロデューサーとこの話をしたとき彼は、「芝居は漢方薬だと思うんです」と励ましてくれた。今現在の私がここに在るのもこの言葉の影響が大である。
別役さんの戯曲は漢方薬の宝庫である。一つの同じ言葉が、感情というフィルターを通ることで千変万化する。
それはある時は人の疲れを癒し、励まし、対立を和らげ、笑いをもたらす。人の心にしみる暖かさを漲らせている。美しい日本語の響きを二十一世紀に残すのも 我々の仕事と考える。漢方薬の効果が皆さんに行き渡ることを目指して、4年前、この別役マジックに魅了された役者が再び集い、新たに二人のメンバーを加え 今回の公演が実現した。この芝居に協力してくれた全ての方々に感謝したい。

因みにこの芝居の千秋楽の翌日は9/11である。
合掌。

川畑秀樹



川畑秀樹(かわはた ひでき)
新国立劇場演劇芸術監督、栗山民也氏の紹介で2000年に坂手洋二氏と出会う。坂手氏の演出助手として燐光群『パウダー・ケグ』『南洋くじら部隊』『ララ ミー・プロジェクト』、自転車キンクリートSTORE『ウインズロウ・ボーイ』に参加。また、燐光群 Species of 20th Centuryでは『岸田國士三作品上演「葉桜」「驟雨」「ある親子の問答」 』、『壊れた風景』を演出。2002年、文化庁在外研修でNYCでOff Broadwayの芝居作りにオブザーバーとして参加。2005年、北九州芸術劇場シアターラボにて『地蔵さんが転んだ』を演出。