過去の上演作品[1996-2000]

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Species of 20th Century

岸田國士 三作品上演

『葉桜』

『驟雨(しゅうう)

『ある親子の問答』

作= 岸田國士 演出=川畑秀樹


<東京>2000年9月6日(水)~10日(日)梅ヶ丘BOX

00/09/06

CAST

「葉桜」
    母……中山マリ
    娘……樋尾麻衣子

「驟雨」
    朋子……尾形可耶子
    家政婦……大山頼子
    譲……川中健次郎
    恒子……高野旺子

「ある親子の問答」
    青年……大西孝洋
    母……中山マリ
    老紳士……川中健次郎


STAFF

美術/加藤ちか 

照明/竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 

舞台/千田ひろし 丸岡祥宏 柿澤宏子 向井孝成 中島忠昭 

照明操作/内海常葉 

音響操作/江口敦子 

受付/上田郁子 桐畑りか 

協力/高津映画装飾美術株式会社 小津畳店 木下建具店 

制作/燐光群+(有)グッドフェローズ




当日配布パンフレットより


坂手洋二


  川畑秀樹さんは端正な人である。そのたたずまいが、である。冷静で、それでいて、熱い。決して相手に不必要なプレッシャーを感じさせることなく、「問題は、あなた自身がどうするかなのですよ」と気づかせる彼の存在が、あらゆる現場で、その劇の空間の座標軸を明瞭にする責務を果たしていることは、想像に難くない。彼が多くの演劇人の厚い信頼を得ているのは、当然である。
 岸田國士戯曲の、いっけん台詞中心に見える、しかしフィジカルでエロチックな世界を彼がどうつかまえ、いかに捩じ伏せるのか。新旧取り混ぜた劇団の面々が、どこまで彼の要求に応えられるのか、楽しみである。
 『神田川の妻』名古屋との共同制作+ツアー、『2.5Minute Ride』プロデュース上演、11月に控える国際合作『南洋くじら部隊』、そして本作。「燐光群」+「グッドフェローズ」は、夏から暮れにかけて同時進行する四つの企画をこなしている。
 梅ヶ丘BOXというスペース、そして我々のチームが、劇団の活動という枠を越えて、演劇に関わる情報・人脈のステーション、現在の日本演劇に於ける創造の根域の一つとして機能しうる、その可能性が、今まさに証明されようとしている。



***



燐光群、そして岸田國士の世界へ


川畑秀樹


 「燐光群」という名前を初めて聞いたのはいつだったか記憶が定かではないが、夜の漁り火のように暗闇の中に燦然と輝く光を想像したのは鮮明に覚えている。イメージの世界でありながらその光はもの凄く強烈だった。おそらく数多くの作品を発表し続けるそのエネルギーを無意識に感じとっていたのかも知れない。 その劇団の主、坂手洋二氏との出会いは今年3月、燐光群公演「パウダー・ケグ」に遡る。稽古に入る数日前、「演出助手をやらないか」という依頼を受けて明大前の喫茶店で初めて会ったとき、黒の革ジャンに黒のジーパンという出で立ちで現れた彼は、その眼鏡の奥に、子供が遊びに夢中になる時のような熱のこもった目を持って私との出会いを演出してくれた。30分位のつもりが、1時間半もの長きに渡ってしまい、2人共あわてて次の仕事に飛び出したのを思い出す。今思えば、黒づくめの彼の中に見え隠れした人を引きつける熱情は、さながら夜の漁り火にも似た燐光だったのかも知れない。(因みに燐は猛毒である)
 「パウダー・ケグ」の楽日近く、アトリエ公演などやらせてもらえるとうれしいのですが・・・と持ちかけた3日後、この企画が具体化した。顔ぶれはご覧のように本公演ばり。坂手さんの目が悪戯っぽく笑っている気がする。彼の熱気とまともに渡り合ってきた役者さんと共に未知なる岸田國士の世界へ。新しい出会いの場を提供してくださった燐光群の皆様に本当に感謝したい。