過去の上演作品[1996-2000]

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2.5 Minitue Ride

 

グッドフェローズ プロデュース

2.5 Minute Ride

ツー・ポイント・ファイヴ・ミニット・ライド

作=リサ・クロン 訳=常田景子 演出=坂手洋二


<東京>2000年9月13日(水)~17日(日)紀伊國屋サザンシアター

00/09/13

私のパパは、ごくふつうの「アメリカの父」。 

変わったことといえば最近、ジェットコースターマニアになったこと。 

そして、アウシュビッツに忘れものをしてきたこと。


私はリサ・クロン。女優。劇作家。ニューヨーク在住。

「ファイヴ・レズビアン・ブラザーズ」のメンバー。

私のだいじな人たちの、とっておきの話をお聴かせします。


パパは一人でアメリカにやってきた。ホロコーストの生き残りとして。

「ユダヤ人に生まれるという幸運に恵まれなかったら、俺はナチになっていたか

もしれないよ」
ジェットコースターとの出会いが、厄介な病気を一杯抱えたパパの老後の楽しみ

になった。

……「だって、自分じゃ何もしなくていいんだよ。座ってさえいりゃいいんだ」

……そうして私とパパは、いつもよりちょっと長い旅に出た。


1999年 オビー賞受賞。<二分半の体験>をめぐる、衝撃と感動のモノローグ・

ドラマ。

最高の顔合わせにより、日本初演。

CAST

篠井英介


STAFF

美術/加藤ちか 

照明/竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 

音響/嶋猛(ステージオフィス) 

舞台監督/森下紀彦 

舞台監督助手/楠原礼美子 

演出助手/深井一雄 

宣伝意匠/高崎勝也 

企画協力/(有)アムアーツ 奥山緑 

通訳/川端亮子 

宣伝協力/上田郁子 

受付協力/長嶋美少子 

協力/アトリエダンカン 高津映画装飾株式会社 C-COM オサフネ製作所 吉田啓子 

制作/古元道広・国光千世 燐光群・(有)グッドフェローズ




当日配布パンフレットより


Lisa Kron

2.5 Minute Ride is a story about the relationship of a daughter to her father's history. It is told in the autobiographical solo form which is currently very popular in the West. It is a deeply personal story but it is my intention that the specifics of this story will create a framework into which the audience will project their own lives and relationships. I am deeply honored that this play has been chosen for production by Good Fellows. It is a great gift to see my work interpreted through the artistry of Mr. Sakate and Mr. Sasai. My hope is that you will see something of yourself in this story.


2.5 Minute Ride」は、父の過去と向き合う娘の物語です。現在西欧で流行している自伝的な一人芝居の形式を取っています。話の内容は全く個人的なものですが、私個人の物語に、皆さんの人生や周囲の方々との関係を重ね合わせて見ていただければと思います。この戯曲がグッドフェローズの上演作品として選ばれたことを大変名誉に存じます。自分の作品が、坂手さんと篠井さんというふたりの芝居の達人によって上演されるのを見るのは、大変幸せなことです。皆さんが、この芝居の中にご自分自身の姿を見てくださることを願っています。


リサ・クロン  訳=常田景子


***


坂手洋二


 日本ではあまり紹介されていないが、最近の英語圏演劇のスタンダードの一つに、「作者が自作を演じる一人芝居」という形式がある。
 昨年春から夏にかけてのニューヨーク滞在中、ほぼ毎日のように芝居を観た。そうした「自作自演」の一人芝居も幾つか含まれていた。その中で、「作者」と「俳優」の関係が抜きんでて見事に対象化されていると感じられたのが、リサ・クロンによる『2.5 Minute Ride』であった。
 この舞台で、「作者が自作を演じる」という手続きは、極めてシンプルだった。リサ・クロンは舞台上で、彼女にとって「必要なこと」をしていた。それが「演劇」であるかどうかは、二の次であるかのように。しかしそれこそが巧妙に仕組まれた方法であった。「自作自演」の美しい秩序は、圧倒的な「演劇」への執念によって支えられていたのである。
 この膨大な情報量の自己言及の劇を、作者自身ではない、異国の俳優が演じるとき、大きな困難が伴うことは予想するまでもない。篠井英介さんは、その困難に挑戦している。彼にとって「必要なこと」を獲得しようとしている。困難を、限りない可能性に転化するために。
 六年をかけて練り上げられたリサのテキストと、篠井英介という稀有な俳優。その媒介としての役割を果たしながら、私も私自身にとっての「必要なこと」を探している。
 とびきりの冒険、「演劇」の枠を越えたドキュメンタルな時間をお目にかけることができれば幸いである。

*        *        *
 この新しい企画のために骨折ってくださった皆さん、長年つきあってきたスタッフの仲間たち、根底から支えてくれた燐光群+グッドフェローズのメンバーに、深く感謝します。