過去の上演作品[1996-2000]

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kingyo no yume/Wild Rumors in Orleans[Remount]

 

Species of 20th Century

『金魚の夢~『現代能楽集 アクバルの姫君』より~

作・演出=坂手洋二


『オルレアンのうわさ』(新人公演)

作・監修=坂手洋二 演出=燐光群演出部(主任  高野旺子)


<東京>2000年2月17日(木)〜22日(火) 梅ヶ丘BOX

00/02/17

激震の中に佇む、二十世紀。

「金魚の夢」は1995年春、三部構成から成る『現代能楽集 アクバルの姫君』の第一部として初演された。
阪神大震災の二カ月後、その惨禍の中に佇む人間の姿を、もっとも早く舞台に取り上げた作品である。
架設の能舞台で上演された二人芝居が、スタジオの濃密な空間に再登場する。

「オルレアンのうわさ」は1984年9月、燐光群第三回公演として吉祥寺のビルの屋上で初演された野外劇である。原子力発電所のある孤島に流れてきた青年は、失踪した娘を想い続ける洋服屋の主人と出会う。そこには少女誘拐事件の噂を流し、その犯人を探索する町内会の人々も現れて……。地震か原発事故かわからない地鳴りの中で、人々の興奮は頂点に達する……。燐光群ニューフェースを中心とした編成でおくる。

CAST>


「金魚の夢」

……中山マリ
男……猪熊恒和


「オルレアンのうわさ」

青年……………丸岡祥宏
女・生徒………樋尾麻衣子
院長・町長……吉田智久
少女・生徒……柿澤宏子
少女・生徒……永田恵子
少年・生徒……向井孝成
主婦・生徒……宇賀神範子
紳士・生徒……藤井峰生
町の人・生徒…桐畑りか
男………………内海常葉 

主人……………川中健次郎



STAFF>


美術協力/加藤ちか 

照明協力/竹林功 

音響協力/島猛 

音響担当/内海常葉 

照明操作/高野旺子 

音響操作/江口敦子 

制作/古元道広 

受付スタッフ/久保志乃ぶ 

協力/C-COM 高津映画装飾株式会社 龍前正夫舞台照明研究所 新宿梁山泊 

深井一雄

宣伝意匠/江口敦子 

助成・芸術文化振興基金



当日配布パンフレットより


 大雑把に言ってしまっていいのかどうかわからないが、日本の現代演劇の現状に於て、「劇団」というものには、二つの際立った性格があるように思う。
 一つは、自発的に集まった人間どうしが、演劇に対する方向性やコミュニケーションの取り方を共有する、同志的な結束を持ったグループであるということ。
 もう一つは、同じ集団の中で、従来メンバーと新入者が交流することによって、俳優やスタッフが育っていく「場」を担うということ。
 私たちが自らの稽古場を持つようになって十年近くになる。その間、幾度かこの場所を本公演のための稽古以外に活用する機会を持ってきた。小人数の有志による実験的な公演と、新人を中心とした試演会である。1998年からはこの二つのシリーズを併せて「Species of 20th Century」と銘打った。「二十世紀を検証する」という大枠のみを決め、以上の二つの性格の導くところを、それぞれ推し進めてきたのである。
 今回の『金魚の夢』『オルレアンのうわさ』二本立ても、自主的な参加者の要請に従い、企画を決定した。
 『金魚の夢』は、三部構成から成る『現代能楽集 アクバルの姫君』の第一部として初演された。中山マリと猪熊恒和が、独立した二人芝居として再演したいと提案し
た。
 『オルレアンのうわさ』は、私が22歳のときに野外劇として上演した、燐光群三本目の芝居だ。猪熊恒和のデビュー作でもある。若手メンバーが合議の上、まさか再び上演されることがあるとは思わなかった私の16年前の旧作を引っ張り出してきてくれた。ガリ版刷りの台本が懐しかった。川中健次郎がそれに乗った。昨年夏から参加した新人たちは、『天皇と接吻』で東海村の事故を取り上げる遥か以前に、この劇団が原子力発電所の島を舞台にした劇をつくっていたことに驚いたようだ。
 『オルレアンのうわさ』では、原発事故と関東大震災が、人間社会を揺さぶる災厄として、重ねて描かれる。『金魚の夢』は阪神大震災の一か月後に書かれた。この組み合わせの符合は偶然ではない。どうやら私たちは、大理石で固められた要塞よりも、立ち続けることの困難な不安定さの中に、自分たちの場所を見いだそうとしているのだ。
 有志の自主性を重んじたこの企画の稽古の間、私は別件で沖縄やインドネシアに調査旅行に行き、半分も東京にいなかった。『金魚の夢』はスタッフ・キャストも初演時と同一であるし、二人の俳優が自分たちで稽古場の楽しみ方を見いだしてくれればいいと思った。若手が率先して進めた『オルレアンのうわさ』の方は、私がインドネシアに行っているあいだに演出家の交替劇があったりして、なかなか波乱万丈のようだ。若手とはいっても彼らのほとんどが初演時の私よりはトシを食っているのだ。どんなに足場が揺れ動いていようとも、「自分の居場所は自分で見つけるのだ」と檄を飛ばすことが、私の主な役割である。おそらく演劇の第一歩は、舞台の上に晒された俳優が「逃げも隠れもできない」ことを知るところにあるのだから。


坂手洋二