過去の上演作品[2011-]

トップページへshapeimage_2_link_0
 

Uchu Miso Shiru 2

 

宇宙みそ汁

清中愛子 構成・演出坂手洋二


地球に向かってただ一人  パラシュートで降り立っていく

エプロン巻きつけ 私が降り立ったのは


現代詩の新たなる野心が、台所の野戦基地から劇空間に舞い降りる!


清中愛子の詩、手記などを坂手洋二が構成・演出した『宇宙みそ汁』を観て驚いた。等身大の濃い生活感、造船所でのリアルな仕事の描写などが、途方もない笑いの感覚、カオス的な奔放な想像力と見事に共存していたからだ。小さな空間から生まれた大きな作品世界に心を動かされた。(扇田昭彦)


詩的、ユーモラスで現実的。宇宙と命の循環を思わせる舞台。彼らが宇宙に浮かぶ一粒一粒の命として見えてくる。狭いアパートの台所を中心に生きる女の絶対的孤立と孤独を冷静に観察し、ミクロとマクロの視点で対象化する力があるからだ。言葉の一つ一つがエネルギーを持って空間に立ち上がり、命を宿すのだ。しかもそこには震災の日の花屋のシーンのように、美しいものが切り捨てられて行く今への怒りもある。(中日新聞 8月25日夕刊 安住恭子)


梅ヶ丘BOXという何もない狭い空間に人生と宇宙がくっきりと浮かび上がる1時間40分。詩人清中愛子さんの詩集、坂手さんにあてたメールなどをコラージュして作り上げられた色鮮やかな言葉の海。何もないが故に無限を作りうる演劇の王道を知る。言葉を立体化する作業をつねに演劇はするわけだけれども、しかし今作の、寄る辺ない空間にゆるぎない世界を作り上げるその匠の技は必見。(CoRich舞台芸術! 松枝佳紀)

無秩序な小さな水のコメディー

Les petites comédies de l'eau en désordre

作・演出坂手洋二 


フランス・パリ郊外マルヌ県「水のフェスティバル」で本年5月

ワールド・プレミア上演された短編『利き水』『入り海のクジラ』、

2001年、国際合作「ランドマイン・プロジェクト」シンガポール会議で

エピローグとして書き下ろされた詩劇『じらいくじら』等、

「水」にまつわる連作集、全作日本初演!



トーンはリリカルですが、全体として感じ取れるのは、生々しい現実の手触り。(岩佐壮四郎)

利き酒のように、水を飲むとその出自がわかるという舌の優れたマスターがいるバーに、客が行く。原発事故に対する直裁的な言及はありませんが、現在の状況で、人間が本来的な感覚と、家族との同居を失っていることを象徴的に描いている秀作。(小山内伸)

(悲劇喜劇 10月号)

梅ヶ丘BOX 20周年記念フェスティバル・アトリエの会

二本立て上演

<東 京>2012年12月5日(水)~9日(日) 梅ヶ丘BOX

チラシ画像 東京28_Uchu_Miso_Shiru_2_files/%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%81%BF%E3%81%9D%E6%B1%81%E5%86%8D%E6%BC%94%E3%80%80%E3%83%81%E3%83%A9%E3%82%B7%E7%94%BB%E5%83%8F.pdf

CAST

『宇宙みそ汁』

愛子○円城寺あや

東の愛子○松岡洋子

西の愛子○樋尾麻衣子

南の愛子○田中結佳

北の愛子○中山マリ

男1(父 他)○鴨川てんし

男2(階下の男 他)○川中健次郎

男3(栄さん 他)○猪熊恒和

男4(蚊 他)○杉山英之

男5(イケメン宣教師 他)○鈴木陽介

息子○宗像祥子

少女○横山展子  福田陽子  田中結佳

   永井里左子

ゴキブリ○桐畑理佳




STAFF

照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)

照明操作○小林尭志

音響○島猛(ステージオフィス)

音響操作○武山尚史

美術○じょん万次郎

舞台監督○西川大輔

演出助手○山田真実(初演)

衣裳○ぴんく ぱんだー・卯月

文芸助手○久保志乃ぶ・清水弥生

宣伝オリジナルデザイン・振付協力・イラスト○清中愛子

宣伝意匠○高崎勝也

美術協力○松村あや

協力○浅井企画 高津映画装飾株式会社 高橋淳一 荒井優 菅原有紗 清水香美 制作○古元道広 近藤順子

Company Staff○根兵さやか 橋本浩明 内海常葉 秋葉ヨリエ 大西孝洋

■当日配布パンフレットより■


梅ヶ丘BOXへようこそ

坂手洋二


 清中愛子さんの『宇宙みそ汁』に出会ったのは、昨年〈三田文学新人賞〉の審査員として候補作を読んでいたときである。早々に戯曲部門を「該当作無し」にしてしまったので私は、あまり仕事がなくなってしまった。小説等の他部門には積極的に意見を言わなかったが、詩については迷いなく『宇宙みそ汁』を推した。そして吉増剛造さんらと協議の結果、賞を増やしてしまったのである! 『宇宙みそ汁』は演劇にすることを想定して書かれたものではないのに、そんじょそこらの戯曲よりも、劇空間でのテキストとして耐えられる強度を持っている。清中愛子自身による紙漉きから印刷・装幀まで含めたオール手作りによる自家製詩集『宮ノ前キャンプからの報告』、以前以後の作品、手記、私へのメール、さまざまな彼女の言葉によって編成した。私はそれらを構成はしたが、いっさい書き加えてはいない。清中さんはしばしば稽古場に来訪した。上演をまったく想定せず自分自身を描いた詩が劇として立ち上がっていくのをその本人が目の前で観ているというのは、なかなか不思議だし面白い。演劇はやはりあらゆる可能性に開かれている。

 「無秩序な小さな水のコメディー」は、フランスで用意されたフェスティバルでの括りのキャッチフレーズだ。ちなみに「コメディー」は、かの国では必ずしも「喜劇」を意味しない。念のため。

 『じらいくじら』は、『だるまさんがころんだ』に入れた『セントラルパークの地雷』と同時に、<ランドマイン・プロジェクト>シンガポール合宿で書いた。今は亡き斎藤憐さん、翻訳・通訳の志磨真実さんと、ご一緒だった。毎日のように三人で水辺を歩いたことを思い出す。あらためてお二人のご冥福をお祈りする。


 梅ヶ丘BOXという拠点を持って二十年余。初心に還って、アトリエの飾らない空間をそのままに、公演をさせていただくことになりました。極小の空間だからこそ、宝石のように磨きあげられればと思っています。

 助成金がまったくない、純粋自主公演です。「公立の演劇」に公共性があると保証されているわけではないでしょう。民間の自主的な活動にこそ豊かな公共の理念と実践があることを、あらためて認識しています。


(2012年7月)



未確認地帯のエプロン族

清中愛子


鶴見の京浜工業地帯をママチャリで必死に走る茶髪のギャルがいたらそれは私です。

横浜のうらぶれたアパートの狭い部屋で六年の月日を過ごし、なぜか主婦となった私自身にいつもどこか自己疎外感を抱きながら、台所アトリエで処女詩集『宮の前キャンプからの報告』を作り上げました。詩は子を産むと同時に生まれた新しい生命感でした。赤ん坊の生命力が私の体の中にある自然に呼応し、再び引き出された生命力です。どこにでもいる主婦の私が、ありふれた日常の中に見える景色をそのまま書いたものが、このように第三者の目に触れるものとなり、私と息子の当たり前でありながら閉ざされた日常が、人前にさらされていくことは、ものすごく不思議な感覚です。ですが、 自己存在を問いながら社会から一番遠い場所で孤立して生きる多くの母親たちの姿は、みな私と同じです。そんな何千何万もの母親たちの中の一人が偶然、汚れたエプロンをつけたままに手を引かれ、 何か発言の出来る場を与えられた、そのように私は今の自分自身を感じています。まだ濡れた手を慌てて拭いながらようやく、おどおどと人前で話しはじめた私ですが、私が必ず戻ってくる場所とは息子との二人の小さなこの暮らしであり、誰も知らないこの場所で、

何かをいつも追い求めながら、冒険したり絶望したり、ほそぼそと詩を書いているのです。そんな私を見い出し光を当てて下さったのが、坂手洋二さんという一人の劇作家でした。


[清中愛子] 主婦の抱える心の葛藤や孤独を独自に抽象化した詩を作り、2011年『宇宙みそ汁』により三田文学新人賞奨励賞、「文芸思潮」現代詩賞大賞を立て続けに受賞。他の作品に、2010年 処女詩集『宮の前キャンプからの報告』(第十六回中原中也賞最終候補)がある。

『入り海のクジラ』

頭○杉山英之

肉○鴨川てんし

骨○円城寺あや

放送○宮島千栄 武山尚史 小林尭志


『利き水』

マスター○猪熊恒和

ミユキ○田中結佳


『じらいくじら』

くじら○猪熊恒和  川中健次郎  中山マリ

少年○宗像祥子

兵隊○鈴木陽介  田中結佳

村人○横山展子  福田陽子 永井里左子

象○杉山英之

コブ○鴨川てんし

12/12/28