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CAST

大西孝洋 ……… デルバート
猪熊恒和 ……… ゲーリー
工藤清美 ……… スー(ゲーリーの妻) ポーラ サニーの母親
瀧口修央 ……… ロバート 黒人警官 黒人男性1
江口敦子 ……… ジョージア(ロバートの妻) ケリーの判事 サニーの検事
久保島隆 ……… 白人警官1 キャロル保安官 法廷弁護人 白人看守 受刑者1 

                                ドイル(ケリーの兄)  元ボーイフレンド 農夫
杉山英之 ……… 白人警官2 副保安官 ローズ 南部の白人男 ロバートの判事 

                                受刑者2 ジェフロバートの検事
小金井篤 ……… ケリー
亀ヶ谷美也子 … サンドラ(ケリーの妻) 被害者の女性
樋尾麻衣子 …… ケリーの弁護士 デイヴィッドの弁護士 ロバートの弁護士
裴優宇 ………… ケリーの検事 ジェシー(サニーの夫) 白人警官3 

                                デイヴィッドの検事 受刑者3 黒人受刑者 黒人男性2
内海常葉 ……… デイヴィッド
中山マリ ……… サニー



STAFF

照明=竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 
音響=島猛(ステージオフィス)  
衣裳=前田文子
美術=じょん万次郎
舞台監督=堀井俊和
演出助手=吉田智久
照明操作=桐畑理佳
音響操作=亀ヶ谷美也子
文芸助手=圓岡めぐみ 清水弥生 久保志乃ぶ
イラスト=山田賢一
宣伝意匠=高崎勝也
Company Staff=川中健次郎 鴨川てんし 下総源太朗 宮島千栄 宇賀神範子 

                             向井孝成 塚田菜津子
協力=金沢市民芸術村
   小池陽子 園田佳奈 田中星乃 寺島友理子 増永紋美 宮島久美 八代名菜子 

           吉村敦子 近藤順子
海外通信事務=JOHN OGLEVEE
制作=古元道広 國光千世


平成16年度文化庁芸術団体重点支援事業
平成16年度文化庁芸術祭参加 


<作者プロフィール>

ジェシカ・ブランク(劇作家・俳優)
『Undermind』『A Bird in Hand』など多くのインディペンデント映画、ミネアポリスやニューヨークの舞台に出演。雑誌や新聞などへの執筆多数。最近は、短編小説の出版に向け執筆中。

エリック・ジェンセン(劇作家・俳優)
『Black Knight』『The Love Letter』などの映画、ニューヨークの舞台、『Law and Order』『Third Watch』『Deadline』などのテレビ番組に出演。

ブルース・クローンバーグとともに映画『Gimme Noise』を共同執筆、製作、監督する予定や、『The Exone-rated』の演出家であるボブ・バーバランが演出するテレビ映画を製作する予定などがある。
本年『The Exonerated』メイキングについての本を出版する。    




当日配布パンフレットより


 ご来場ありがとうございます


 既にいろいろなところで触れたので重複するが、この『ときはなたれて』上演は、『ララミー・プロジェクト』等と同様、「この劇のテーマは坂手向きではないか」と知人・関係者に紹介を受けたことがきっかけである。今回はそうした「推薦者」が複数だった。
 私は二十年前から「陪審裁判を考える会」に籍を置いているが、現在、日本に「裁判員制度」が取り込まれようとしている重要な局面であるにもかかわらず、ここ数年ご無沙汰してしまっている。戯曲『ブラインド・タッチ』のモデルである星野文昭氏も、一度は「死刑」を求刑され、今まさに「無期懲役」の日々をたたかわれている。この日本版上演は、そうした現実を背負う人々に向けての、自分なりの「伴走」となるのかもしれない。
 私は『ララミー・プロジェクト』『CVR チャーリー・ビクター・ロミオ』などについて、「ドキュドラマ」というまとめかたをすることに積極的な意味を感じていない。「ジャンルを越えた演劇の多様性がある」と考える。そして、「劇というものは、ひとつひとつ別々な考え方で作られている」という「常識」に基づいてそう認識している。今回の上演は、そのことをわかりやすく立証することになるかもしれない。
 この秋、燐光群は、このアトリエ公演と11月の国際合作『フィリピン ベッドタイム ストーリーズ』の二本を、キャストを別々な班に分けて上演し、新国立劇場『二人の女兵士の物語』、二兎社『新・明暗』に参加するメンバーもある。いつものように全日程を「全員一丸となって」とはいかないわけだが、劇団として総合的に豊かな活動ができはじめているのだと思う。これも周囲の皆様の御支援のたまものである。今後とも、能う限りご期待に添うよう努力したいと思う。


坂手洋二


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『ときはなたれて』との出会い

常田景子


 『ときはなたれて』のニューヨーク公演を見たのは去年の3月のことだが、まったく偶然だったと言ってよい。その旅の目的は、上演が決まっていたミュージカルのニューヨーク公演を見ることだった。アメリカ人の知人と話をしていたら、「私も見てないから何とも言えないけど、あなたは『ララミー・プロジェクト』をやったんだから、これ、見てみたら面白いかもよ」と教えてくれたのが、『ときはなたれて』だった。ヴィレッジ・ヴォイスの広告を見たら、囚人服を着た目つきの悪い若い男が、横目でこちらをにらんでいるイラストが描いてあって、なんだかなあ、と思ったが、上演されていた劇場が、泊めてもらっていた友人の家から、さほど遠くないところにあり、たまたまその前を通ることがあったので、聞いてみたら自分が行ける日のチケットがあったので、見ることにしたのだ。
 「死刑判決を受けたが、その後、冤罪が晴れた人たちのインタビューもの」ということぐらいしか予備知識もなく見たので、かなり衝撃を受けた。何より、こんな運の悪い人たちって世の中にいるんだ、と思った。まったく理不尽というか不条理というか、ほとんどカフカの世界だが、実話なのである。ちょっとしたことの重なりで、それこそ坂を転がり落ちるように、死刑を宣告されてしまう。それがまた別の不幸の引き金になった場合もある。
 芝居が終わったあと、その日、劇場に来ていたケリー本人が舞台上で紹介されて、ちょっとしたスピーチをしたのだが、ごく平均的な、どこにでもいそうな白人の中年男性で、死刑判決を受けるような凶悪犯罪の犯人にされたというのも、「へえ?」という感じだったし、今聞いたばかりの悲惨な体験を潜り抜けてきた人とも思えない。それがまた驚きだった。
 『ときはなたれて』は、警察の捜査や司法制度の穴から、深い深い淵に落ちてしまった人々の体験を語っているが、彼らは無実の罪が晴れた分、まだ幸いだったのだ。そう考えると、本当に恐ろしい。そんな取り返しのつかない結果を招く可能性をはらんでいる制度も恐ろしいし、無実の人を死刑判決にまで追いやる人間の偏見や予断も恐ろしい。それにしても、この芝居で体験を語る6人は、全員、驚くべき強靭さで、身に降りかかった恐るべき体験に対処している。彼らが死刑判決を受ける原因となった犯罪も人間がしたことであり、彼らを誤って死刑囚監房に送り込んだのも人間がしたことだ。この芝居は、人間のどうしようもない不完全さと、人間の底知れない不屈さを語ってくれる。


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イントロダクション


2000年の夏、私たちは、アメリカ全土を旅し、さまざまなリビングルームに座って、無実の罪で死刑囚監房に入れられるというのがどういうものかという話に耳を傾けた。話をしてくれた人々は、人種、宗教、教養などは、さまざまに違っていた。彼らの世界観も、さまざまだった。彼らの唯一の共通点は、彼らがみな死刑を宣告され、2年から20年に渡る期間、死刑囚監房で過ごしたということ、やがて無実だということがわかって、釈放されたということだった。私たちは、40人の人間にインタビューした。これらのインタビューのうち6つが、「ときはなたれて」の核となっている。
 その春、私たちは、コロンビア大学で死刑に関する会議に出席して、この芝居のアイディアを思いついた。私たちは、ニューヨーク・ダウンタウンの演劇界の友人で、「カルチャー・プロジェクト」を運営しているプロデューサーのアラン・バックマンに、そのアイディアを持ちかけた。
 ちょうど、イリノイ州知事ジョージ・ライアンが、イリノイ州での死刑の一時停止を宣言したところだった。一方、ホワイトハウスにいる、もう一人のジョージ(ブッシュ)は、テキサス州知事時代、1976年に死刑制度が復活して以来、他のどの州よりも多くの死刑を執行させた。この問題は、ニュースに多く取り上げられた。アランは、選挙前に台本を仕上げれば、秋に3日間、自分の劇場を使ってもいいと言った。それで、私たちは旅に出た。北西はシカゴまで、南はテキサスやマイアミまで、そして、その間にある、ありとあらゆる町で、人々に会い、彼らの物語が、この芝居になった。
 私たちは、何時間分もあるインタビュー録音テープを持ち帰った。原稿に書き起こすと600ページ分あった。私たちは二人とも、もともと俳優なので、才能があるのに仕事に恵まれない友人がたくさんいる。私たちは、彼らにワークショップに参加してもらって、日常会話による何百ページの原稿を芝居にまとめていった。同時に、演出家のボブ・バラバンに電話して、秋に、アランの劇場で行なう3回のリーディングの演出をしてくれるように頼んだ。ボブは、私たちが磨きをかけつつあった台本にプロの目を注ぐとともに、リーディングの出演者たちを集めるのを助けてくれた。集まった出演者は、ゲイブリエル・バーン、オジー・デイヴィス、ヴィンセント・ドノフリオ、チャールズ・ダットン、チェリー・ジョーンズ、デイヴィッド・モース、スーザン・サランドン、ティム・ロビンス、デブラ・ウィンガー、その他、大勢の優れた俳優たちだった。彼らは、12人の元死刑囚の物語からなる最初のバージョンを演じた。それらの物語は、すべて、私たちが行なったインタビューから抽出したものだった。
 「カルチャー・プロジェクト」での3回のリーディングと、国連での1回の上演のあと、私たちは再び旅に出た。私たち二人にも、演出のボブにも、観客にも、元死刑囚の人々が、自分の身に起きたことについて、どう感じているかということは、はっきりしていた。その時まだはっきりしていなかったのは、そもそも、そんなことがどうして起きたのかということだった。そこで私たちは、それぞれのケースをもっと完全に語るために、芝居の中で語る物語の数を減らすという、ものすごく困難な作業にかかった。さらに、裁判記録や捜査記録も掘り起こした。私たちは、ほこりっぽい裁判所の記録保管室で何時間も過ごし、宣誓供述書や警察の調書、法廷での証言などの詰まった段ボール箱やマイクロフィルム・ファイルを調べまくった。裁判所の職員たちは、私たちのことを法学部の学生だと思ったらしく、私たちも、その思い込みをくつがえすようなことはしなかった。二、三の例外を除いて、この芝居の中で語られる言葉はすべて、公的記録――法律書類、裁判記録、手紙などか、私たちが元死刑囚の人たちに行なったインタビューから取ったものだ。元死刑囚の人たちの名前は、本名を使っている。その他の人々の名前は、法的な理由から、変えたものもある。
 この芝居の大部分は、2年、5年、10年、あるいは20年前に、当事者たちが言ったとおりの言葉だ。私たちがインタビューを行なっていた時点で、無実の罪が晴れて死刑囚監房から解き放たれた人々は、89人いた。この文を書いている時点で、その数は102人にのぼっている。私たちは、その一人一人の物語が、この芝居の一部だと思っている。


ジェシカ・ブランク&エリック・ジェンセン

 

冤罪によって死刑判決を受け、苦難の末に解放された「元死刑囚」たち……。
アメリカ全土で深い感動と、死刑制度廃止に向かうムーブメントに支えられ、社会現象といえる大きな反響を巻き起こした話題作。
かつて死刑囚として刑務所に収容されていた経験をもつ40人の人々と、その家族へのインタビューをもとに、幾度かのリーディングを経て、練り上げられた。
2002年にティム・ロビンスの「シアター・ギャング」(L.A.)で初演された後、同年10月から2004年3月までオフ・ブロードウェイにて約1年半に及ぶロングランとなり、リチャード・ドゥレイフィス、ブルック・シールズ、ロバート・ヴォーンら、多彩な俳優たちが出演している。
また、2003年アウター・クリティックス・サークル賞〈最優秀オフ・ブロードウェイ作品賞〉をはじめとする、数々の賞を受賞。
……『ララミー・プロジェクト』『CVR チャーリー・ビクター・ロミオ』に続いて、燐光群が上演する、アメリカ演劇最新作。