過去の上演作品[2001-2005]

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YANEURA

 

屋根裏

作・演出=坂手洋二


<東京>5月16日(木)~6月4日(火) 梅ヶ丘BOX

<名古屋>6月7日(金)〜9日(日) 七ツ寺共同スタジオ

<大阪>6月11日(火)・12日(水) 扇町ミュージアムスクエア

02/05/16

これは発明なんだ

今も誰かが

あの屋根裏に立て籠もっている

そう考えただけで

もう一日生きてみようかと思うことができる

そういう発明なんだ

CAST

中山マリ………父 女 婦人 ウメさん
川中健次郎……中年男 主任 紳士 母 タケさん
猪熊恒和………兄
千田ひろし……つなぎの男 マッちゃん
大西孝洋………帽子の男
下総源太朗……刑事1 素浪人1 死体 息子 戦闘服1
江口敦子………少女
樋尾麻衣子……若い女 白い女
丸岡祥宏………松葉杖の男
宇賀神範子……女 青い帽子の若者
内海常葉………バイヤー
向井孝成………刑事2 素浪人2 青年 戦闘服2
瀧口修央………ハセガワ 若い男
宮島千栄………キャスター 先生
桐畑理佳………ぬいぐるみの女
ぺ優宇…………赤い帽子の若者
古崎篤…………少年


STAFF

照明/竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
照明操作/吉田智久
美術/じょん万次郎
美術協力/加藤ちか
舞台監督(地方公演)/堀井俊和
舞台協力/海老澤栄
音響/じょん万次郎 内海常葉
音響操作/内海常葉 江口敦子 桐畑理佳
音響協力/島猛(ステージオフィス)
衣裳/大野典子
演出助手/吉田智久 香取智子
文芸助手/久保志乃ぶ
宣伝意匠/プリグラフィックス
Company Staff/高野旺子 小室紀子 工藤清美
協力/高橋紀江 藤本直樹 加藤めぐみ 市川はるひ 新井哲
   三谷滋 細田和宏 山根光壱郎 金沢愛 三吉欧介 千葉愛花
   葛西摩利 尾張由紀子 大前摩希子 原田樹里 小松弘明
   藤原康弘 管由美子 聖澤毅 則武鶴代 斉藤恵 福島智 土田愛子
   若月智美 佐伯知佳子 大橋敦史
   高津映画装飾株式会社 オサフネ製作所
制作助手/寺島友理子
制作/古元道広 国光千世 燐光群アトリエの会

平成14年度文化庁支援事業




当日配布パンフレットより


ご来場ありがとうございます

坂手洋二


 考えてみれば、この空間のために新作戯曲を書き下ろすのは初めてのことである。もう十年半も、この場所にいるにもかかわらず、基本的にこの場所を集団創作の拠点としてきたにもかかわらず、である。
 いわゆる「アトリエ公演」は何度か行った。
新人の発表会、俳優主導の自主公演、私は音楽を担当して遊んでしまった舞踏公演シリーズ、まず本公演では採算の取れそうになかった実験的な海外戯曲の試演、新たな演出家の発表の場、等々……。
 そして今までに一番手応えがあったのが、三年前、映画監督黒澤明の唯一の書き下ろし短編戯曲『喋る』の、じつに半世紀ぶりの上演であった。この、いざまともにやろうと思うと意外とストライクゾーンの狭い上演の実現は、とても新鮮な体験だった。ある意味で徹底的に「手探り」であり、そこに戦争の時代を生き延びた昭和日本映画への思いが重なった。あの体験がその年の『天皇と接吻』にどれだけ役立ったか、計り知れない。それに組み合わせた短編『その後』を元ネタのフランス映画から持ってきた力業の、へとへとになりながらも爽快だった記憶。この小空間を愛し、劇団にこだわり、とりあえず演劇を続けていく元気を貰った。
 そう、私は生かされている。いつも、私以外の誰かの存在の御陰によってだ。
 この小空間でやりたかった企ては幾つもある。その一つはついにアトリエで行うことはなく、世田谷パブリックシアター・シアタートラムでの『トーキョー裁判1999』で、かなりスケールアップした形でいきなり実現した。要するにこの場所を「船底」にしたかったのだ。シアタートラムを「船底」にする試みはなかなか根性が要ったが、かなり人々を驚かせることに成功した。この挑戦で美術の加藤ちかが読売演劇大賞の最優秀スタッフ賞を受けたことは、スタッフ・劇団員の誇りである。
 今回は「船底」に対応するかのような「屋根裏」である。もちろん美術コンセプトは『トーキョー裁判1999』に劣らず極端である。具体的にどこがというのは、ご覧いただければ一目瞭然であろう。
 これほど劇団員の一人一人をすべて生かそうと思って書いた戯曲は過去にそれほどない。これでがんばれなかったら、みんな俳優や劇団員などやめたほうがいい。私も座付作者を気取ることなどやめてしまおう。
 必要なことは、演劇の楽しさである。それが人生の楽しさになるべく、努力したい。こんな脳天気な言い方にこそに厳しさがあるのだとは、このアトリエに辿り着く前の私は、まだ認識し得ていなかったかも知れない。
 アトリエでの十年半の、肉体と無意識に根付いた記憶を、冷静に見つめていきたい。私たちはこの間、確実にこの十五坪の場所にひきこもり、なおかつこの地球という天体のあちこちを旅してきたのだ。一つ一つの出会いの刻印に、ありがとうと言いたい。今日この場所を共有してくださる、あなたにも。




早川書房「屋根裏/みみず」